ポリ塩化ビニリデンってどんな素材?
「ポリ塩化ビニリデン(PVDC※)」は、主に家庭用ラップや食品保存用の包装材料などに使われ、私たちの豊かな食生活に役立っています。では「ポリ塩化ビニリデン」とは、どのような特長を持った素材なのでしょうか。※PVDC(ポリ塩化ビニリデン)Poly vinilidene chlorideの略称

酸素と水蒸気を通しにくい素材です

ポリ塩化ビニリデンは、「酸素と水蒸気(水分)の両方を非常に通しにくい」、という特長を持った素材です。これは他のプラスチックや樹脂には見られない、ポリ塩化ビニリデンがもつ優れた特長です。

酸素は、私たちが呼吸するために不可欠なものではありますが、食品にとっては必ずしも味方ではありません。食品を徐々に酸化させ、味や色を変えてしまいます。

ポリ塩化ビニリデンは、酸素を通しにくい(酸素バリア性)ことから、食品の酸化を防止することができるのです。また同時に、水蒸気(水分)も通しにくい(水蒸気バリア性)ので、食品が湿気を吸うのを防いだり、食品の乾燥を防いでみずみずしさを保ったりします。

下の表は、ポリ塩化ビニリデンを含む代表的なプラスチック素材の、「酸素透過度(酸素を通す度合い)」と「透湿度(水蒸気を通す度合い)」を比較したものです。ポリ塩化ビニリデンが、他素材に比べて酸素透過度透湿度ともに低い(通しにくい)ことが分かります。

代表的なプラスチックの酸素透過係数と透湿係数

香りを保ったり、移り香を防いだりする素材です

ポリ塩化ビニリデンは、酸素以外のガス(気体)も通しにくいので、食品のもつ香りを保ちます。また他の食品のにおいが移るのを防ぎます。

資源の有効利用に役立つ素材です

ポリ塩化ビニリデンの約70%は塩(塩化ナトリウム)由来です。塩(塩化ナトリウム)は海などから大量に採取できる、豊富な資源のひとつです。

臭いが器の外に漏れない
ポリ塩化ビニリデンの原料成分

省資源に役立つ素材です

ポリ塩化ビニリデンは、少ない量でも充分な食品保存効果が得られる素材です。

たとえば、ポリ塩化ビニリデンを他フィルムなどに薄くコートするだけで、酸素の透過は数倍から数百倍小さくなります。ポリ塩化ビニリデンのコートをせずに、同程度の酸素バリア性を得るには、数倍から数百倍のフィルムの厚さが必要になります。

つまり、ポリ塩化ビニリデンコートフィルムは、樹脂の量が少ない分量で済むので、他の素材フィルムと比べると、製造時に必要なエネルギーや排出ガス (二酸化炭素)なども少ないと言えます。また、ポリ塩化ビニリデンの約70%は、塩(塩化ナトリウム)由来です。塩は海などから大量に採取できる、豊富な資源の一つであり、他素材と比べて石油資源の節約に貢献できます。

代表的なプラスチックの酸素透過度